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テルミンの製作レポート・番外編
テルミンの製作800日
テルミンの製作を始めてからの日数が2009年10月中旬に800を超えた。
800日版のテルミンは少しずつであるが改良を積み重ね、かなり低い周波数までサイン波状で出力するようになった。  
低い周波数までサイン波とするにはピッチOSCとリファレンスOSCの間の引き込みを何処まで減らせるかで決まる。
そこで今回はミキシング回路をダイオードMIXからDBM(NJM2594)とし2つのOSCからの信号の接続を工夫して引き込みをこれまでに無くす少なくできた。
引き込みは回路の配置にも大きく影響を受けるのでプリント基板(MBT-2)用3枚をカットして各ブロックを取り出し写真のように配置を変えた。
ケースは写真のように角丸タイプとした、構造的には丸木舟のようになっている。
ポケットラジオで作るテルミンもこのケースに入れる予定です。
   
  

  



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テルミンの製作を始めてからの日数が2008年末に
500日を超えた。
教室で使用しているテルミンはアース線をつながなくても小型のスピーカーで安定に働いている。
この理由が解かるまでに長い期間を費やしてしまったのである。
理由が判ってしまうと、本当はこの半分以下の期間でテルミンは完成していたことになるのであるが・・・!!。

他の方の製作記事とは違った内容もあり、自作派の方の参考になるかと思います。
お急ぎの方へ:
マゼンタ色の項目名が各項の結論となっています、気になったところのみご覧下さい。
まず1(one)アンテナテルミンからスタート

1)音がなんだか変(発振周波数の変動はHz台/秒まで減らすべし)
波形は歪んでいるのではないが、うがいをしている声とかワウッテいるような感じがする。
これは早い時期に解決した。
発振回路の周波数変動が数十Hz/秒で変動していた。
電源に極僅かのリプルが乗っているのが原因であった。
LC発振回路でも数百KHzで発振するともう一桁変動巾を減らすには電源変動を少なくしないといけないことが判った。


2)弾き易いテルミン-1 (オクターブ間のピッチを均等にすべし)
3オクターブ以上の音域は出ているが高い音になる程オクターブ当たりの手の移動距離(以下オクターブ間ピッチと表記)が狭くなっていて弾きにくそうである。

これでは我流で弾いて見ようとしても無理ダヨー!。
と云う事でプロの演奏家の演奏法を知らないと演奏し易いテルミンは出来ないと考えテルミン初級教室に入門、
演奏家志望ではなく、弾き易いテルミンを作りたいのでと最初にお願いをしました。

初日に先生からお聞きした話の要点 
このテルミン(moog社 Etherwave Theremin)は各オクターブ間の間隔が同じになるように作られているので演奏し易いと言われたのです。

初日はゼロポイント、自分に合ったオクターブピッチを(PITCH)ツマミで合わせる事を習う。
試してみると確かに各オクターブ間のピッチはほぼ均等になっている。

2つの発振器の出力をMIXするだけでは弾き易いテルミンはできない。
何かが違うと云う事で色々調べてアンテナコイルとかlinearizing coilと云うものが入っている事がわかる。

アンテナコイルは発振回路出力とアンテナとの間に入れるコイルである。
ピッチアンテナにもボリュームアンテナにも入っている。
最初は無線機のアンテナの根元に入れるローディングコイルのようなものを想定していた。
テルミンの使用する周波数に対してピッチアンテナの長さは約60cm位でマッチングの取れる長さの数100分の1であるので感覚的にはこ
う説明しても良いかも知れない。

実際の動作としてはアンテナコイル(L)とアンテナ(C)で直列共振をしている。
アンテナコイルの値の一例として10mHから30mH近辺でオクターブ間ピッチがかなり均等になった。
アンテナコイルの値はインダクタンスが同じであれば同じようにピッチの均等化が図れるのではなく、コイルの浮遊容量、自己共振周波数、発振回路の特性などが関係するようである。
もう少しと言う所でLの値を増やすと発振周波数が飛んでしまって電源を入れなおさないと戻らなくなったり、突然ピッチが殆ど変化しなくなったりすることがある。
市販のコイルでは程ほどのところで妥協するのが良いようです。

アンテナとの距離と発振周波数の関係をグラフ化した例を http://www.mb-labo.com/ テルミン/テルミンの製作/(6)老舗テルミンの特性を測る に示します。
グラフのカーブの直線性が高いほどオクターブ間ピッチが均等化されていることになります。


ここから2(two)-アンテナテルミン

3)弾き易いテルミン-2 (ボリュームコントロール操作のスパンは30cm以上にすべし)
オクターブ間ピッチの調整方法が解ったので2アンテナ化を図る。
音量可変回路はディスクリートで作動アンプ構成や、バランスミキサーIC、トランスコンダクターIC等を試したが、
音質加工も加えたいことや、ICの入手のし易さを考慮してNJM13600とした。
ボリュームコントロール操作のスパンはアンテナコイルの調整やアンテナと周囲のストレー容量が影響が大きく影響します。


4)アンプとテルミンの相性? (テルミンはアースにつないで使うべし)

テルミンにつなぐアンプによって調子が良かったりノイズが入ることがある。
私のテルミンを教室のアンプにつながせて頂いて試すとノイズが出る。
テルミン教室の先生はつなぐアンプで違いが出たことはありません。
moogはそこが安定していますよ、とのことである。

この半年位の間はテルミンとアースのことで色々考えつづけたが、先生の言葉が引っかかった。
これまでひょっとしてmoogのACアダプターには仕掛けがあるのではないか?と疑っていたのである。

よそのテルミンの中は見ないと言うことで製作をしてきたがこの1点に関しては現物を調べないと解らないので、暮れに思い切ってEtherwave Thereminを買ってしまった。
ACアダプターを分解しようかと思ったが取り敢えず外部から各線間の容量を測定して推定すると、0.01μFのコンデンサー3ヶが電源フィルター回路のXコンデンサー、Yコンデンサー風に入っているようである(*1)。

100Vラインに高周波電流を逃がす方法も以前に実験しており、アースを取るのと同様かそれ以上の効果を確認ガアリ、のどから手が出るほどやりたい方法であったが、PSEがらみの問題で避けていた(*2)。

ついに”Etherwave Thereminはアースにつながなくてもアンプを選ばないで安定して使用できると云う”これまでの謎が解けた訳である。
500日以上をかけてしまったが最大の時間を費やしてきた謎が年内に解けたので万歳である。

推定したACアダプター内の回路の確認をする実験
試しにmoogのACアダプターの2次側を延長ケーブルを作ってアース線を外してみるとものすごいノイズが入るようになり予想通りで納得である。

またEtherwave Thereminのオーディオアウトジャックに接続したケーブルのシールド側と対地アースの間にはテスターのACレンジで測ると約50V出ており(250Vレンジ、50Vレンジとも)推定した回路の特性に合っている。
この方式はテルミンの動作上は使い易く都合が良いが接続したアンプ等が金属ケースであれば触れたときの状態によってはビリッと電撃ショックを感じる恐れがありそうだ。

参考のためmoogのACアダプター(PSEマーク付)の漏洩電流をマルチメーターのAC電流レンジで測って見たら0.13mAであった。

漏洩電流は”電気製品の安全適合性”試験に合格すれば安全規格としては合格であるが、0.1μFのコンデンサーが100Vラインとテルミンのアースラインがつながっていると言うのは気色が悪い。

やはり我がテルミンはアースをとるか、大きな電源トランスを使ったアンプにつないで使用するのが安全と考えた。
(一寸重いがある裏技を使うとmoogのACアダプターのようにアース線をつながなくても良い方法もある)
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後日談 (t-Voxも内部のアースラインがACラインにコンデンサーでつながっていた。)
年が明けて2009年テルミン教室の練習初めの日同じ教室の方から”今は使っていないのでゆっくり見てください”と t-Voxテルミンを借りることができた。
早速漏洩電流を測ってみたがこちらは表示しない、マルチメーターのAC電流レンジの最低値以下と云うことのようだ。
裏蓋を開けて電源基板を見ると0.001μのコンデンサー2ヶがYコンデンサー風に入っている、moogのACアダプターの1/10の値である。

t-Voxは環境に対してシビアであると言う風評があるがこのことも関係がありそうな気がしてきた。


5)弾き易いテルミン-3 (発振電圧を高くするとノイズは少なくなる)

アンテナコイルでオクターブ間ピッチの均等化をしたらゼロポイント近辺でボリュームアンテナから手を上げるとノイズが気になるようになった。
(アンテナコイルが無いと時はこのようなことが無かった。)
良く調べると時間によって出たり出なかったりすることもあり外部ノイズのようである。
すぐ近くで工事があり生コン車とポンプ車が着た時は特に酷く騒音の響き具合と連動してテルミンに入るノイズも変動して原因調査に役立った。

対応策としてはテルミンのアンテナ出力を出来るだけ大きくしてS/Nを稼ぐしかないようだ。
これまでの±9Vを±12Vに変更して発振電圧のレベルUPをして30V-pp〜35V-ppに調整した。
自宅のミニコンポ、自作した5Wのアンプで試運転の結果まあまあの妥協点かと感じています。

なお、電池式のテルミンではテルミンのアース線を手に持ったり指に巻いて使用すると言う説明がされているwebページがありますがACアダプターから電源をとるテルミンでは決してアース線を体に触れさせないで下さい。

AC電源で使用する電気製品はアースにつないで無い時は(PSEマーク付きであっても)体が電気製品の金属部分と他の電気製品や家具、建物の一部に同時に触れると多かれ少なかれ漏洩電流が流れ、電撃ショックを受ける恐れがあります。
普通は一寸びっくりしただけですみますが、万一関連する部品が故障(絶縁低下など)していると感電の恐れもあります。

注:(*1)
電源フィルターの場合コンデンサーはACラインとフィルターのアース端子に接続される。
通常フィルターのアース端子は機器のFG(フレームグランド)に接続される。
ノイズ状況によってはFGとSG(シグナルグランド)が接続されることもある。
いずれにしても電源コンセントにアース端子か、3PのACプラグを介してFGが接地線に接続されることが前提である。
Etherwave Theremin のACアダプター(PSEマーク付きなので日本向け)の場合はアース端子の無い2極のACコンセントを想定している形状であるからアース(接地線)にテルミンのSG(アース)を接続できない。
このためACアダプター内のAC100Vラインに2ヶのコンデンサーを直列に入れこの中点をアース(接地線)としてテルミンのSG(アース)につないでいる。  

この結果テルミンのSG(オーディオアウトプラグのアース側など)にAC50Vが乗ることになる。
テルミンに接続されたアンプのケースが金属製だとここにもAC50Vが乗ってくる。
窓のサッシュなどとアンプの金属部分を同時に触れるとビリビリと電撃ショックを受ける可能性がある、50Vの電圧であるがACアダプター内のコンデンサーから漏洩してくる電流なので感電事故には至らないが注意をすべきである。


注:(*2)
市販にはこのタイプのACアダプターは探しても見当たらないので特注品として製作をしなければならない。
ACアダプターとしてPSEマークを付けるには認定機関での検査が必要。
(*1)のように使用法によっては電撃ショックを受ける恐れがある。


6)弾き易いテルミン-3 (テルミンの出力は連続波である・アンプとスピーカーボックスに注意すべし)

弾き易くするにはテルミンの方だけ良ければOKではなくアンプとスピーカーの選定も重要です。
通常は自作した5Wのアンプに使用しなくなったステレオのスピーカーをつないでテストをしています。

少し大きい目の音でテストをすると特定の音程で音が濁るのが気になる。
オシロの波形をみてもクリップしないレベルであり、悪いのはアンプではなくテルミンでもないので最後にスピーカーを疑う。
S社製の3ウエイスピーカーであるがなんとツイーターの取り付け部分とかベゼルが共振しているのだ。
アンプのICは規格が最大5Wであるが、電源電圧を考えればせいぜい3W(ノンクリップ)しか出ないはず、
120W(EIAJ)のラベルが付いたスピーカーなので3W位ならば正弦波を入力しても大丈夫と過信をしていたのがいけない。
テルミンの出力波形はほぼ正弦波状や矩形波状の連続信号も出力されるのでアンプやスピーカーには十文に余裕を持ったものを使用しなければいけないと反省する。
スピーカーボックスは分解してメインの16cmスピーカーのみ残し他の2つは取り外しシングルスピーカーとした。
ベゼルやネットの枠も取り外し振動しそうな余計なものは無くした。
ついでに内部のネットワークも変なところで共振をしないよう取り外して使用することにした。
テルミンの音域は5オクターブ位出るようにしても2KHz一寸上までが基本波であること、よほど音色を強く加工しなければ倍音も他の楽器に比し少ないので返って素直で良いかと思っています。

スピーカーの選定でもう一点重要なのはPC用の小型のアンプ入りのスピーカーなどでは力不足である点です。
テルミンの音域をは5オクターブ位出るようにすると低い方は100Hz以下になり60Hz近くまで出せることになります。
シングルスピーカーで低音を良く出そうとすれば16cm位のスピーカーをがっちりとしたボックスに入れるのが良いかと思います。
好みで高音側を優先するときでも12cm位は欲しいかと思います、この場合でもボックスは出来るだけ大きくしたいものです。
ちなみに中古ステレオから流用のボックスは約20Lの大きさで、かろうじてバッグに入れて持ち運びが出来る大きさです。

 


    

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